目をあけて   闇と光の間で (6)





綜海さんの腕のなかで,涙は静かに流れていった.

限りなく広がる哀しみ・・・・・
ただひたすら,ハートは震え,涙はそこから静かにあふれ出ていった.


私は目を閉じた.
震えるハートを押し込んで,そこにいた.

「顔をあげて.目をあけて.ここにいて」
裁くのではなく,命令するのでもない,やさしい綜海さんの声に,私は目を開けた.
綜海さんが,私の両腕をつかんで,目の前で,じっと私を見つめていた.

私はこの場にいたくなかった.
目を開けてそこにあるのは,ずっと私であり続けた闇だ.

私が闇に堕ちていったとき,誰も助けてくれなかったじゃないか.
私が闇の中で,独りで泣いたとき,誰も抱きしめてくれなかったじゃないか.
今,私がそこにある闇を見たら,きっとまた独りだ.
誰も助けてくれない.
誰も信用できない.
また,たった独りで,闇に飲み込まれていくかもしれない・・・

あそこに帰るのは,もう,いやだ・・・・・・・・


綜海さんの瞳を見つめ返すと,そこに映っていたのは,深い哀しみと愛の光だった.

“ひとりじゃないんだよ”

あふれる涙で綜海さんの顔がよく見えない・・・・・・

“ひとりじゃ,ないんだよ”

ああ,そうか,ひとりじゃないのか・・・

そこに何があるとしても,
私は,もう,ひとりじゃないのか・・・

目をあけて,周りを見回した.

仲間がいる.

涙でぼやけた視界,その先に見えたのは,紛れもない,強烈な光,そして怯えきった闇だった.





                                            2008.4.20 ハル



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