本郷綜海   闇と光の間で (3)





彼女と初めて会ったのは,彼女のワークショップに参加したときだった.
まったくの一目惚れだった.

噂は聞いていた.
「彼女は本当にすごいよ〜,闇払いだからね〜」

地獄も天国も見てきたと思わせる,深い深い声.
そのパワー!
真実の光と愛をたたえた瞳.
すべての破壊と再生を司る,美しくも激しい女神のように見えた.

彼女の前に立つと,私は本当にあるがままでいい,と,心から思える自分がいて驚く.
何も話さなくていい.
気を使わなくていい.
感じるままに,そこにいていい.
あるがままの自分でいていい.
そこにある深い安堵感・・・

それは,彼女が自分自身をあるがままに受け入れているからではないだろうか,と考える.
彼女の瞳に無償の愛が無限に宿って見えるのは,
彼女があらゆるものをこえて,自分自身を愛しているからではないか,と考える.

そばにいるだけで癒しが起きるヒーラー.
彼女の瞳を見つめると,私は深い愛に包まれるのを感じる.
彼女に見つめられると,私は真実の自分,自己の本質が何もまとわずに,すべてをさらけ出してそこに立つのを感じる.

そばにいるということ.
その凄さを教えてくれたのも,彼女だ.
「そばにいるだけ? 私の仕事はたったそれだけなの?」と言うヒーラーの言葉を私は何度か聞いたことがある.
だが,そばにいることこそが,素晴らしい癒しをもたらす.
愛がなければ,人は人のそばにいることなど出来ない.
ただ寄り添って,静かにそばにいる.
ジャッジしない.
アドヴァイスしない.
それは深い,愛と信頼の行為なのだ.

一方で,私は彼女のワークショップの手法が苦手だ.
言葉によって,真実を掘り下げてゆくからだと思う.
ある課題に対して言葉のダイビングを試みてゆく作業には,まるで傷に塩をすり込むような苦痛を感じる自分がいる.
今まで痛いつらい思いは散々してきたので,もう十分,これ以上はいやだと思う自分がいる.

それでも私は彼女のことが大好きだったから,彼女が講師のひとりである,ティーチングアシスタントをするためのコースに
参加することにした.

このコースには,FSP 3の私の同期メンバーもたくさん参加する.
私は本郷綜海と穴口恵子のもとで(まるで聖なる父と母のもとで,と言っているかのようだ),
あのFSPのクラスの“メンバー意識”との和解を意図していた.

ニセヒーラーを殺せ.
その源へ.



アシスタントティーチャーコース2日目.
始まってみると,阿鼻叫喚のるつぼだった.
客観的にあの状況を見たならば,ここは精神病院か,新新興宗教の一室だと思われること間違いなしだ.
泣き叫んだり,笑い転げたり,身体をばたつかせたり,それぞれが綜海さんの絶妙な誘導に乗って,
それぞれのスタイルで徹底的に解放してゆく.

私は割と冷静だった.
が,何がスイッチだったのか,明確に覚えていない.
綜海さんの声だったような気がする.
地獄から轟いてきたかと思うような,低く太い声が,何かを揺さぶる.
短く,長く,その波長がエネルギー体の壁を壊し,私の意識は奈落に落ちてゆく・・・
・・・・・・・・・・・


思い出せ・・・
私の手は,血みどろだ・・・・・・・





                                      2008.4.18 ハル




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