再会,復活





昨夜,誘われて,教会のパイプオルガンコンサートに行ってきた.

さほど冷えていない夜気の中,結構大きな教会のモニュメントが唐突に現れる.

この時点で,まずいなと思った.

まだ時間はあるけれど,早々に席につこうかと一旦会場に入った.

が,私はそこでもうだめだった.

古く重い鉄枠のがっしりした木の扉を開けると,
教会独特の空気が流れ込んでくる.

第3チャクラの裏から脊椎を昇る強烈な恐怖と吐き気を感じ,
しかしぐっとこらえた.

やっぱり時間まで外で話をしようと提案し,時間ぎりぎりまで外にいた.

今回のこのコンサート,誘われて行くと答えたのは私だけれど,
行けと言ったのはハイアーセルフだ.

ここのところ特に,私は教会苦手意識がひどくなっていた.

そして,その理由にはあまり触れないようにしてきた.

うやむやにしておきたかった.


時間になったので,場の設定をし,プロテクトを固くして会場に入った.


ミサを行う大きなホール,
祈りのときに膝をつくための添え木のついた幅の狭い机,
高い吹き抜けのような天井,

教会の匂いに少しぴりぴりとオーラを逆立てながら,後ろの方の席についた.

曲目の間に祈りの言葉が入り,
コンサートとは銘打っているけれど,やはりミサといった感じだ.


なるべく,顔を上げないようにして,目を瞑り,深呼吸を繰り返す.

見ないように,見ないように,幾度も消す映像.

しかしホールいっぱいに響き渡るパイプオルガンの振動に揺さぶられ
ついには見ざるを得なくなった.



異端審問にかけられて,処刑された男性.

祭壇を引き摺り下ろされながら,彼は十字架を見据え

無実を叫んだ.


神よ!
何故このようなことに??
私はやってない!!


それまで信仰した十字架は,何も答えない.

救いの手はどこにもなかった.


何も信じられない.

神などいるものか.


男性は静かな闇に飲まれて死んだ.



「あのとき,私との絆を完全に断ち切りましたね」

目の前の,イエス・キリストが話しかける.

珍しいね・・・どういうつもりだか.



ドルフィンでは必ず,ジーザスを呼ぶ.

私もセッションでは彼と一緒に仕事をする.
しかし,セッション外で,個人的にじっくり彼と話をしたことはない.

話す気もなかった.

私は彼があまり好きではなかった.

が,この瞬間,私は彼を嫌い,憎んでいたことがはっきり分かった.


「見てごらんなさい,あの時,本当は何が起こっていたか」

うるさいな.
今更なにを見てどうだというんだ・・・


絶対見ない.
そう私は決めて,固く目を瞑り,頭を背けた.

これじゃまるで拷問だ.
ただ,パイプオルガンを聞きに来ただけなのに・・・

ホール天井に反響するパイプオルガンの音が,容赦なくハートチャクラを振動させる.

音の次元が開く.

いくら目を閉じても,顔を背けても,バイブレーションとともに,過去が流れ込んでくるのを
止めることは出来なかった.


あれほど助けを求めた,あの場所.

私が孤独を刻印した場所.

何故,助けてくれなかったのか・・・

私はあなたを信仰した.

それこそが真実の光であり,愛であると信じたからだ.

なのに,何故・・・見捨てられ,絶望と呼ぶにはあまりにも
みじめに
死んでいかなくてはならなかったのか.



奥歯で苦さを噛み締めながら,涙で曇るその場を見渡す.


そこにいたのは私ひとりではなかった.

上空にも,私の周りにも,たくさんの光の存在がいた.

私を囲み,励ますように,光で包んでいる.

その中に,イエスがいた.

そばに・・・



「あなたの哀しみを無視したのではありません.
私はいつも,どんなときも,あなたのそばにいた」


拒絶しても,拒絶しても,否定しても,
もうどうしようもない.

彼の白い強烈な光,真実の愛を,もうこれ以上,否定できない・・・


冷たい教会の石壁,
痛みと哀しみと孤独のみの記憶がぼやけ・・・
塗り替えられてゆく.

私は見捨てられたわけではなかったのか・・・本当に?

すぐ私のそばに,彼の強い光と,そしてその存在のあたたかな温度を感じる.


私が自分にとっての真実を生きたその生命が,イエス・キリストによって,すくい取られていた・・・


バッハの荘厳な旋律でこじあけられたハートに,イエスの白い愛の光が流れ込んでくる.

強烈な光,

光の波は,過去を洗い,傷を雪ぎ,私からあふれ,その場をすべて
満たした.

静かな涙とともに,

音の洪水の中で,私は身を任せ,それを静かに味わった.


私の中で,やっと,イエス・キリストが復活した.




そういや,随分前に,サッカーラのセッションで,「あなたはイエス・キリストとの絆を結びなおす」って
言われてたんだっけ,と今これを書いていて思い出した.

そのときは何のことだかさっぱり分からなかった.


教会を出るころには,もうぐったりだった.

でも,行ってよかった.





                                            2009.11.15 ハル




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